第9回 おでんの夜
「おう」
穴馬当てて最上機嫌の大馬鹿コンビ二人、肩を抱いてやってきました。場所は勘太郎行きつけの、「ユウジの店」。完全個人経営、メシ&飲み屋です。
「あ、カンさん。いらっしゃい。何だ、上機嫌すね。なんかいいことあったんすか。」
「あったも何もどかーーーーんよ。わはは。今日は死ぬほど飲むぞー。」
「飲むぞーーー。」
「あ、そちらは?」
「あ、これ。この人見えるんか?」
「見えるも何も、す、す、凄いキャラクターで」
「この人は・・・・おやじ・・・いんや大八木さんって言ってな、ま、親戚筋だ。親父ちゃんでいいよ。」
「お初でござ。どうかよろしう。」
ペコリとお辞儀、親父ちゃん。
「あ、そうなんですか。初めてですね。お身内の方は。はい。こちらこそどうかご贔屓を。」
「親父ちゃん。この店はな。顔はこのとおりまずいが・・・」
「はいはいまずい。こらーっ。」
「まずいが・・・料理は滅法うまいぞ。腹もぺこぺこだし。さー喰おう。」
「喰おう喰おう。おでんおでん。」
「そうだ。おでんだ。煮えてるかおでん。」
「はいはい。出来てますよー。うちのは自家製だから。つみれだけだけど。あ、汁も。うまいよー。」
「食べていい?」
「おう、食え喰え。」
いきなしおでん鍋ごと口の中にぱっくり
ごくごくごく。
目をまん丸にする二人。
「おいおい。喰っていいっていったけど、ほんとに鍋ごと喰いやがった。俺の分がそれじゃ無くなるでしょ。少しづつ、味わって食べましょうね。」
「はーい。」
また口から鍋を戻して置きました。
「カンさん、今のは・・・。今の。」
「あ、今のね。この人奇術好きでね(今日2度目だよ)」
「えっ?」
「だから奇術好きで、こうして人を脅かすのが好きなんだよ。全くしょうもなくて。すまんな。」
「すまんすまん。」
「あ、そうなんですか。驚いたなもう。」
「そうゆうこと。適当に見繕ってどんどん出してね。そうだ。まずは乾杯だ乾杯。酒くれ。ポン酒!。乾杯だから冷でいいや。」
「はい、これで」
「駄目だよー。一番いい酒。はっかいさん。」
「はっかいさんはっかいさん、それちゃうだい。それ。」
と欲しがる。思わず一升瓶渡す勇次。
受け取った親父ちゃん。
ごくごくごくごく。
4口で飲んでしまいました。
「わはは、凄い凄い。これはほんと。酒豪だから。こっちもそれでいこう。かんぱーい」
かんぱーい。
「かんぱーい。ひっく。うめー。おでん食べるね。」
ぱくぱく。
「うめー。」
「あはは。うめーだろ。さー食え喰え。どんどんどんどん、他の料理も出せだせ。」
「ははは、いいですねえこの方。よっしゃ腕によりをかけて・・・。ところで今日は何かいいことあったんですか。」
「あはは。それがね。馬だよ。馬。」
「馬?」
とそこに突然、店の引き戸ががらがらと。
「こんばんわっ。お、客がいるじゃねえか。景気いいねえ。これなら今日は払ってくれるかな。」
人相の悪いおあにいさんが二人。
「あ、どうも。こんばんわ。あ、あ、あの件でしたら。もう2,3日。すみません。待ってくれませんか?」
「待てと言われて待ったんじゃ、この商売は出来ないんだよ兄さん。今日払えなかったら店にあるもん全部持っていくっていったじゃなーい。すみませんね、お客さん。このお酒も持っていくよ。」
と目の前の瓶を。
「こらこら。せっかく始めたところなのに。なんだ君達は。失礼な。何?勇次。どうしたのこれは。」
「いやすみません。仕入れの資金繰りに困っちゃってちょっと町金で借りちゃったんです。」
「ちょっとじゃないよ。こーんなだよ。持って行きます。すまんねすまんね。」
と勘太郎のおでん皿にも。
「この野郎。これでもくらえ。」
勘太郎パーンチ。
ぱこ。
やくざのおでこにジャスト・ヒット。
やくざさんは倒れた・・倒れた・・・倒れてない。ぴんぴんしてます。
「お、やってくれたね。兄さん。じゃこれはお返しよっ。」
ばこーん。
平手打ち。
飛んでいきましたカンちゃん。
「わ、うちの兄さんに何するのあんた。」
親父ちゃん、立ち上がって
「親父ちゃん光線発射!!」
ぴっかり
頭から強烈な光線が。
「わー目が目があああ。」
勘太郎、復帰。ほっぺ押さえながら。
「どうだ。我々の実力は。がはは。」
「目が目があ。あ、直った。こいつめー。」
「親父ちゃん、行けー。」
「はいな。もう一回。今度は本気よ。」
「あ、すまんすまん。もういいもういい。帰るからもう。」
「ちょっと待ったー。その借金いくらだ。」
「なんだかんだで120万円になりました。」
と泣きながら言う勇次さん。
「よし、その借金俺が払った。親父ちゃん出して。」
「はいな。」と口から札束出してやくざさんに手渡す。
「借用証っ。」と勘太郎が手を。
「あ、ありがとうございます。これ。これです」
「こんなのわー。」
勘太郎が破こうとしたら、親父ちゃんがヨコから手を
ばくばくばくばく。
食べちゃった。
「美味いな。しゃくようしょう。」
「がはは。いいぞ。さあおまえらー、出て行けー。」
「ひゃあああ。」と退散、やくざさん。
「わーーーーーー。ありがとうございます。このご恩は、ご恩は一生忘れません。」
「まーいいってことよ。それよか。めでたいめでたい。3人で飲もう。のもーーー。」
大盛り上がり。店貸切で3人で宴会。翌朝6時まで続きました。
いつの間にか日が変わり
「地球滅亡の日まで残り447日」
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