2005年12月31日

第9回 おでんの夜

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第9回 おでんの夜

「おう」

穴馬当てて最上機嫌の大馬鹿コンビ二人、肩を抱いてやってきました。場所は勘太郎行きつけの、「ユウジの店」。完全個人経営、メシ&飲み屋です。

「あ、カンさん。いらっしゃい。何だ、上機嫌すね。なんかいいことあったんすか。」
「あったも何もどかーーーーんよ。わはは。今日は死ぬほど飲むぞー。」
「飲むぞーーー。」

「あ、そちらは?」

「あ、これ。この人見えるんか?」
「見えるも何も、す、す、凄いキャラクターで」
「この人は・・・・おやじ・・・いんや大八木さんって言ってな、ま、親戚筋だ。親父ちゃんでいいよ。」
「お初でござ。どうかよろしう。」
ペコリとお辞儀、親父ちゃん。

「あ、そうなんですか。初めてですね。お身内の方は。はい。こちらこそどうかご贔屓を。」
「親父ちゃん。この店はな。顔はこのとおりまずいが・・・」
「はいはいまずい。こらーっ。」
「まずいが・・・料理は滅法うまいぞ。腹もぺこぺこだし。さー喰おう。」
「喰おう喰おう。おでんおでん。」
「そうだ。おでんだ。煮えてるかおでん。」
「はいはい。出来てますよー。うちのは自家製だから。つみれだけだけど。あ、汁も。うまいよー。」
「食べていい?」
「おう、食え喰え。」

いきなしおでん鍋ごと口の中にぱっくり

ごくごくごく。

目をまん丸にする二人。

「おいおい。喰っていいっていったけど、ほんとに鍋ごと喰いやがった。俺の分がそれじゃ無くなるでしょ。少しづつ、味わって食べましょうね。」

「はーい。」

また口から鍋を戻して置きました。

「カンさん、今のは・・・。今の。」
「あ、今のね。この人奇術好きでね(今日2度目だよ)」
「えっ?」
「だから奇術好きで、こうして人を脅かすのが好きなんだよ。全くしょうもなくて。すまんな。」
「すまんすまん。」
「あ、そうなんですか。驚いたなもう。」
「そうゆうこと。適当に見繕ってどんどん出してね。そうだ。まずは乾杯だ乾杯。酒くれ。ポン酒!。乾杯だから冷でいいや。」
「はい、これで」
「駄目だよー。一番いい酒。はっかいさん。」
「はっかいさんはっかいさん、それちゃうだい。それ。」
と欲しがる。思わず一升瓶渡す勇次。

受け取った親父ちゃん。

ごくごくごくごく。

4口で飲んでしまいました。

「わはは、凄い凄い。これはほんと。酒豪だから。こっちもそれでいこう。かんぱーい」

かんぱーい。

「かんぱーい。ひっく。うめー。おでん食べるね。」

ぱくぱく。

「うめー。」

「あはは。うめーだろ。さー食え喰え。どんどんどんどん、他の料理も出せだせ。」

「ははは、いいですねえこの方。よっしゃ腕によりをかけて・・・。ところで今日は何かいいことあったんですか。」

「あはは。それがね。馬だよ。馬。」
「馬?」

とそこに突然、店の引き戸ががらがらと。

「こんばんわっ。お、客がいるじゃねえか。景気いいねえ。これなら今日は払ってくれるかな。」
人相の悪いおあにいさんが二人。

「あ、どうも。こんばんわ。あ、あ、あの件でしたら。もう2,3日。すみません。待ってくれませんか?」

「待てと言われて待ったんじゃ、この商売は出来ないんだよ兄さん。今日払えなかったら店にあるもん全部持っていくっていったじゃなーい。すみませんね、お客さん。このお酒も持っていくよ。」
と目の前の瓶を。

「こらこら。せっかく始めたところなのに。なんだ君達は。失礼な。何?勇次。どうしたのこれは。」
「いやすみません。仕入れの資金繰りに困っちゃってちょっと町金で借りちゃったんです。」
「ちょっとじゃないよ。こーんなだよ。持って行きます。すまんねすまんね。」

と勘太郎のおでん皿にも。

「この野郎。これでもくらえ。」
勘太郎パーンチ。

ぱこ。

やくざのおでこにジャスト・ヒット。

やくざさんは倒れた・・倒れた・・・倒れてない。ぴんぴんしてます。

「お、やってくれたね。兄さん。じゃこれはお返しよっ。」

ばこーん。
平手打ち。

飛んでいきましたカンちゃん。

「わ、うちの兄さんに何するのあんた。」
親父ちゃん、立ち上がって
「親父ちゃん光線発射!!」

ぴっかり

頭から強烈な光線が。

「わー目が目があああ。」

勘太郎、復帰。ほっぺ押さえながら。
「どうだ。我々の実力は。がはは。」

「目が目があ。あ、直った。こいつめー。」

「親父ちゃん、行けー。」

「はいな。もう一回。今度は本気よ。」

「あ、すまんすまん。もういいもういい。帰るからもう。」

「ちょっと待ったー。その借金いくらだ。」

「なんだかんだで120万円になりました。」
と泣きながら言う勇次さん。

「よし、その借金俺が払った。親父ちゃん出して。」

「はいな。」と口から札束出してやくざさんに手渡す。

「借用証っ。」と勘太郎が手を。
「あ、ありがとうございます。これ。これです」

「こんなのわー。」
勘太郎が破こうとしたら、親父ちゃんがヨコから手を

ばくばくばくばく。

食べちゃった。
「美味いな。しゃくようしょう。」

「がはは。いいぞ。さあおまえらー、出て行けー。」

「ひゃあああ。」と退散、やくざさん。

「わーーーーーー。ありがとうございます。このご恩は、ご恩は一生忘れません。」
「まーいいってことよ。それよか。めでたいめでたい。3人で飲もう。のもーーー。」

大盛り上がり。店貸切で3人で宴会。翌朝6時まで続きました。

いつの間にか日が変わり




「地球滅亡の日まで残り447日」

203

2005年12月30日

第8回 カラスの勝手だ

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第8回 カラスの勝手だ

ぜいぜいぜい

「ああ、ちょっと休もう」
息を切らして勘太郎。スポニチを開いて下に敷き、体育館座り。

ぜいぜいぜい
「休む休む」
おやじちゃんもとなりに。直に座ろうとして

「おいおい。尻が汚れるぞ。これ敷けよ。」

「さんきゅさんきゅ。どっこらせ。」

「どっこらせって、あんたロボットだろ。息を切らせるのか。」
「ぎゃはは、雰囲気雰囲気。」

10分ほど、ほけーとする二人。

「お、そろそろ発走だ。見よう見よう。」

場内放送
(本日の最終レース、東京競馬場サラ系3歳上1000万円以下タラキュー特別、芝の1600mです。各馬順調にゲートに向かって。最後の馬18番のスルノハオマエダが今、入りました。

ガシャン

さあ、一斉にスタートっ。おっと、6番のバンバンビガロ大きく出遅れ。1番人気の6番が出遅れました。)

「よしっ!やったー。親父ちゃん予想ぴったし。あとは先頭が・・・」

(先頭は1番のバクダントッキュー、軽快に飛ばしてます。2番手はちょっと離れて2番のモエモエテイオー・・・その後ろにぴったし3番のキラークイン、そして離れず4番のヒトクイザッパ・・・)

「いいねいいねえ。このまま逃げてばっちし頂きっ。凄いぞ。」

「へへへ。予定通りです。ペースも遅いから、だいじょーーぶ。」
と右手で鼻の穴に親指付けて一回転の親父ちゃん。

(そのままの体勢で各馬最終コーナーを通過しました。バクダントッキュー大きく引き離す。付いていくモエモエ。後続の足色が悪い。一団となって、中からキラークイン内(うち)、ヒトクイザッパが外で追走。・・・・あと200m。そのままの体勢。バクダントッキュー、バクダントッキュー、ゴールイン。そしーてーモエモエテイオー。)

「よしっ。1、2着いただきっ。3着は・・・」
「あ、あそこのカラス!!」叫ぶ親父ちゃん。

その時、かあかあと鳴いたカラスがコースを横切り内ラチ(注:コース内側の柵)の上にちょこんと、ガアガア鳴き出した。

3着目指して激走する3番キラークイン、びっくりしてカラス見つめる。

(キラークイン、突然下がりだしたあ。外のヒトクイザッパ一歩前へ。そのままの体勢でゴールインっ。3着は4番のヒトクザッパ、ヒトクイザッパです。)






「今、3着、ヒトクイザッパって言ったよな。4番の。」
と勘太郎。
「4番の。4番の。3着。カラスが。かあって。」




「うおおおおおおおお。1番−2番−3番。外したーーー。どうするんだ。帰れないよー。」
胸ポケットから馬券を取り出して暴れる勘太郎。
「くそー、こんなもの、こんなもの、・・・え、こんな・・・」
ともう一回見ると・・・

「こんな・・・。おい、3着は4番って書いてあるぞ。」



「あ、あ、当たってるじゃん。何でだ。そうか。急いだから隣をマークシートしちゃったんだ。で、で、配当は????。ど、どれくらいだ。」

「今確定しました。出ます出ます。」

「ええと、2でしょ、5でしょ、あと5でしょ59630円って・・・・」
「そりゃ大体2500万円です。」
「えー、2500まんーーー。」
と叫ぼうとして慌てて口を押さえる。
小声で
「当てちゃったよ。当てちゃったよーーー。」
「当てちゃったよ。当てちゃったよーーー。」
親父ちゃんも小声。顔をぴったし付け合って。

「ばんざーい」
「ばんざーい」

「よし、こっそり交換に行こう。はてさて、経験が無いからどこへ行けばいいかわかりません。」

とにもかくにも館内へ。

「あそこの人に訊いてみようか。案内みたいだし。・・・

すいません。あの高額当選はどこで換えるんですか。」

「高額当選ですか。高額・・・・、あ、まさかお客さん今のレースで2500まん当てた・・」
でかい声を出しやがった。

どすっ。

「や、打ち身。」

ぐふ。

「あ、どうしたんですか。この人具合悪いみたいです。ははははは。逃げろ。」

たたたたたたた。

「どうして当てたのに逃げなきゃいかんの。まったく。」
「あのー、それを言うなら「打ち身」じゃ無くて「当て身」です。」
「遅い突っ込みありがとう。あ、そうか、親父ちゃん知ってるんじゃないの。さっき色々調べて。」
「あ、そうか。知ってる知ってる。はいここです。」
「お、ここか。」

気が付けば窓口の前。さすがに誰もおりません。

「すいません。これ払い戻しお願いします。」

「はい。ありがとうございます。こちらですね。はい。2,2,2、2500まん〜〜〜〜。
失礼しました。」
と窓口のおばちゃん、さすがです。にわかに職業意識取り戻し。
「ちょっとお待ちください。」


待つことしばし。



大きい紙袋がにょきっと出て来た。
「そのままで大丈夫ですか。」
とおばちゃんに訊かれるまもなく、

バクバクバクバク

何と親父ちゃん、食べちゃったよ。札束を。

目を丸くしてピクピクしてるJRAおばちゃん。

「あはは。このおじさん、奇術好きでして。あはは。時々悪いいたづらするんです。すんません、すんません。お気になさらずに。ごらんの通り大丈夫ですから。あはは。では、さらばじゃ。行くぞ。」

小走りで立ち去る。

「おい、ちゃんと出てくるんだろうな。その札束。」
「ぎゃはは。うめえなあお金お金。うん出てくるよ。あとでうんこでどば。って嘘ぴょーん。いつでも御意のままに。」
「そうだよな。じゃ、取りあえず10万ほど。電車賃〜。」
「10万って多いわね。」といきなりホソキカズコの顔になる親父ちゃん。

「ぎゃ、止めてくれよそれ。電車賃と・・・帰り飲み屋で祝勝会。やろうや二人で。」
「わーい。それならOK。はい。祝勝会祝勝会。おでん食べたいですワシ。」
「あー、おでんでもなんでもー。鍋ごと喰わしてやるわ。」
「鍋ごとーーーーー。」


喜んで帰路につく二人の頭上をカラスが飛んでます。

「カー、カー、カラスの勝手でしょーい。まったくもう書き間違えるなよなあ。世話が焼ける連中だなやーカー、カア。」




「地球滅亡の日まで残り448日」

202

2005年12月29日

第7回 一世一代の大勝負

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第7回 一世一代の大勝負

両手を叩いて勘太郎、
「よしわかった。じゃあ親父ちゃん。本気で頼むわ。」
「ほいさ。」
「えーとそうだな、まずは古今東西全ての競馬に関する情報、知識、血統、学問、人間、とか少しでも関係あるものなら全部、ほらネットとか耳とか出来る全ての能力で、ええい、そうゆうの親父ちゃんネットって呼ぼう、略してオーネット。ってこれはまずいか。親父ちゃんネット。で調べてくれ。それを元に馬を見て予想頼みまっせ。」
「じゃあ、行きます。」

目をくるくる、調査モードに入りました。





30分経過



「長いなあ。スーパー・コンピューターじゃなかったの?」
「そりゃもうスーパーだがんね。でも凄いよ競馬って。奥が底無しです。」
「あ、そうだ。親父ちゃんの頭脳って、限界とかあるのかな。これでハードディスクが一杯になっちゃったらやばいです。」
「うにゃ、へーきへーき。余裕よゆー。ただ判断するのがえろう大変。」
「そうか、取れない訳だな競馬って。」



1時間経過。
「おいおい。レース終わっちゃうよー。」
「もうほんの少しなんだけど。


あー腹減った。エネルギーがもうありません。続行不可能です。」
「えっ?参ったなあ。ここまで来て。とほほ。」
「何か食わせろ。あ、あそこで売ってるフランクフルト食いたい。」
「喰いたいって言ったって金がもう無いよ。」
「喰いたい喰いたい。食わせろ食わせろ。喰わなきゃ出来ん。」
「しょうがないなあ。値段はいくらなんだ?。250円。あはは買えるじゃん・フランクフルト1本下さい。」
お店の人の婆さんが
「1本でいいのかい?二人で食べないの?」
「いいです1本で。ボクお腹空いてませんから。」

ぐうううううう。

「あはは。いやダイエット中で。あはは。」
逃げるように猿。

「ほら、どうぞお食べ。残金150円。これこそ一本勝負だな。」
ばくばく。
「うめー。よし、調査再開。ほい。完了しました。」
「はやいなー。」
「もうちょっとだって言ったでしょ。さーパドック、パドック。最終レースに間に合いません。」

二人で駆け足でパドックに移動です。
「さー、ここで決まるぞ。親父ちゃんの目って透視とかも出来るんだろ。」
「あいよ。」
「えーなんつうか、オーラつうの?生態エネルギーか。そうゆうのは見えるのかな。」
「わかるよ。ここにいる馬の今の絶対能力がわかります。」
「よっしゃええど。じゃ見てくれ。そうだ。ほら騎手が乗った。一緒に騎手も見て総合的に行ってみよー。」
「うんうん。はいはい。ほーほー。まずは1番バクダントッキュー。これはもう抜群です。」
「1番?1番は13番人気じゃんか。歳が9歳だからなあ。最近勝ってないし。大丈夫かな。」
「大丈夫。凄いよ今日の調子。騎手もそれ知ってるみたいヨコノリさんやる気バンバンです。内側の芝のいいところを走って逃げ切ります。」
「おーさすが。競馬知識王になりましたね。わかったけど今抜けた1番人気は6番のタケさんのバンバンビガロなんだけど・・」
「うーん、駄目です。見た目落ち着いてるけど、中身の色はマッカッカ。入れ込んでるよ。あれじゃ最後やばいです。見た目わかんないから騎手も気付いてませんです。」
「そうか。それで2番手は?」
「2番のモエモエテイオーだがや。根性無いんで1番は抜かせないけどその後を付いて行きます。確実に2着です。」
「2番、2番。もう100円しか買えないから。3連単(注:1着から3着までばっちり当てる馬券
)一発勝負だよ。2番、2番。2番って10番人気じゃん。こりゃえらいことに。小さな声で言ってね。」
「大丈夫。カンちゃんにしか聴こえないよワシの声。」
「凄いな。じゃ安心だ。あ、急ごう。3番手は?」
「3番手かー。3番と4番がいいんだけど・・・これが着順となると誤差の範囲で・・・悩みます。」
「うーん、時間がー。馬は見たよね。取りあえず馬券売り場に行こう。歩きながら考えなさい。」

駆け足で移動。

馬券のマークシートを手に券売機の前に並ぶ。
「えーと、もう塗っておこう。1着は1番バクダンさんと、2着はモエモエさんと・・まだ決まらないの?」
「うーんうーん。」

列が短くなってついに勘太郎たちの番になりました。
後ろのおっちゃんが
「早くしろよー。締め切りだよ。ほら。」
「すんません。すぐやります。親父ちゃん、3番手は〜〜〜??」
「ええい、これです。3番。いっちゃおう。」
「3番ね。はい。と、100円入れて、馬券入れて。出て来たほい。さあ行こうレースに。」
とその瞬間、締め切り時間。後ろのおいちゃんが真っ赤になってる。
「やば。逃げるぞ。」

後はもう、運を天に任せて最終決戦だ。って何のお話だったっけ。


「地球滅亡の日まで残り448日」

201

2005年12月28日

第6回 当てたるで

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第6回 当てたるで

「何で行くのけいばじょう。」
駅に向かう道すがら親父ちゃんが訊きました。
「そりゃまあ、今日がたまたま土曜日で、地球が危機に瀕してて、お馬さんが俺を呼んだからよ。」
「お馬さんが?」
「そうよ。ひひーんてな。訳すと私で儲けてくださーーあーいってね。それに君がいるからな。」
「おいらが?ふーん。」
「ふーんって。頼むよ。ぜーんぶ親父ちゃんにかかってるんだから。」
「まかせなさい。てか。」

KO線に乗って二人は一目散に府中トキオ競馬場に。あれこれ考えていたらあっとゆうまに着きました。

「ひゃー、いいねえトキオ競馬場。ひさびさー。土曜日出勤の仕事なんかしちゃったもんだから全然来れなかったよ。」
「ケモノの臭いがするね。喰うか。」
「何言ってんだ。喰うんじゃないよ。走るの。」
「ふーん。」
「喰うと言えば何かこう腹減ったな。午後のレースまでまだ間があるし、何か喰うか。奢るぜ。」

・・・・・・

ずるずる、じゅぽじゅぽ
「美味いねこのラーメン。けっこういけるわ。」
立ち食いでラーメン食べてます二人。
「はははははは、何しろ急だったから持ち合わせが無くて、ほら掛け金が無くちゃ話にならないだろ。とっておかなくちゃ。あ、美味い?良かった良かった。はははは。」

はあはあ、ふうふう、ずるずる

「あ、そう言えば、あれだ。親父ちゃんってロボットなのにさ。食べるんだメシを?今更だけど。」

ずるずる、じゅぽじゅぽ

「何馬鹿なこときくでねえ。メシ喰えなくて何が楽しみで生きてるの?それにまー料理ロボットだよ
、わし。」

はあはあ、ふうふう、ずるずる

「まあ、そりゃそうだ。なんか納得しちゃったな。」

ずるずる、じゅぽじゅぽ。ずるるるるるるーーーーくはー。

「ごちそうさま。」
「はいごちそうさん。」

「よっしゃさー行くか。まずはパドック(注:出走する直前の馬が様子をお客さんに見せる場所)だな。ついてきなさい。」
「ほいさ。」
土曜日なんでパドックは空いてました。
それでも最前列となると・・・
「あ、ごめんねごめんね。ちょっといいですか。はい。ど、どう?これが馬。これが競争して走るの。そうだなまずは軍資金稼ぎで固くいくか。1着と2着になる馬はどれだい?」
「わしに訊くのか?」
「そりゃそうだ。教えて〜。」
「うーん、そだな。あの馬とあの馬がいいなわ、わし。」
「あれか?あれは4番のチーボーか。ちょっと待てよ。(電光掲示板見る勘太郎)3番人気か。なるほど。あとは13番のナリタミッキー?ええっと。お、1番人気じゃん。固いねえ。馬連だと・・・
4倍か。まあものは試し確実にいってみよー。」

二人はそそくさと馬券発券機に。

「えーっと、これだな。ちょんちょんちょんと。よっしゃ。4番と13番。何か不吉だな。ええい。
さー行こう。こっちこっち。」

親父ちゃんの手を握って正面ゴール前に向かう勘太郎。ちょっと変な絵。だって親父ちゃん、衣装替えせず、ステテコと腹巻、ランニングのままです。

10分ほど経過。話すことはいっぱいあるだろうに。妙に無口です。

場内放送
(さー、ゲートインが始まりました。本日の第7レース3歳上500万4歳上1000万下混合別定1400m芝の競争。順調にゲートイン進んでいます。・・・さあゲートイン完了した(ガシャン)。
全馬揃っての出走。)

「お、よしよし予定通り。固く固くと。」

(先頭は10番ヨウツウジイサン、2番手は8番ロジャーテイラー、・・・・1番人気のナリタミッキーは6番手、好位置につけてます。・・・・3番人気のチーボーは8番手・・・)

「よっしゃ、トキオは直線が長いから。あの辺の位置が最高!」

(さー直線に入りました各馬いっせいにラッシュいたします。1番手は依然としてヨウツウジイサン。
あと200m。ヨウツウジイサン粘る。外からナリタミッキーが追い込んできた。続いてチーボーも。あと100m。ヨーツウジイサンまだ粘る。50m。必死の追い込みナリタミッキー。チーボー。どうなる。さあゴール。きわどい。)

「え、どうなってるの?決まりだろ、あの2頭で・・」

(際どいですが1着は粘ったヨウツウジイサン。腰痛なのに頑張りました。2着は1番人気ナリタミッキー。3着がチーボーのようです。)


ガーーーーーーン。

「取ったか?」鼻ほじりながら親父ちゃんが訊く。

「ま、ま、ま、まさか・・・・。どうして?スーパー・ロボットだろ親父ちゃんは?何ではずすのよー。」

「外れたのか?いくら賭けた?」

「いくらって、確実だって言うから持ち金4400円のうち、4000円賭けちゃったよ。電車賃も無いじゃんかどーするの。」
とくねくね苦悶で悶える。

「なんであの馬がいいと思ったの?」

「えーだって。あそこ。パドックで。ミッキーちゃんと目が合ったから。かわいいじゃん。チーボーはさあ、パパと呼ばないで。なんちゃって。」

「えー、データとかで見たんじゃないのーーーー。」

「え?だってただ訊かれたから。言われないと何もしませんわし。」

ガーーーーーーン。

「そうだったか。しまったー。よっしゃまだ400円残っとるわ。レースもまだまだ。地球を救う為、あ、こんなところで(見得切って)、あ、負けてはいられませぬわー、ぽんぽんぽんぽん。」

残金400円で地球を救う男。それは管勘太郎。29歳現在無職。独身。恋人無し。




「地球滅亡の日まで残り448日」

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